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私はいつも一人だった。
学校では苛められるし、誰も私の事を気に掛けてくれる人は居なかった。
家族は母しか居ないのに仕事で夜遅くしか帰って来なかったから。


其の日だって、いつもと同じだった。
苛められるのに耐え切れなくて泣きながら家まで走って帰った。
漏れる嗚咽を必死に抑えようとしても止まらず、ソファーに突っ伏して泣いていた。
「バチッ」
何かが弾けた様な音がした。
「・・・?」
私は鼻を啜りながら音がした方を見に行った。
音がしたのはトイレの所だった。
「バチッ」
また、音がした。
「何だろ・・・」
こんな音、聞いた事無い。
そう思いながらゆっくりとトイレに近づいて、思い切りドアを開けた。
いつもと同じ、ただの便器が其処に在った。
「・・・気のせいか」
いつまで経っても音がしないので、気のせいだったという事にしドアを閉めてトイレから離れた。
刹那。
笑い声が聞こえた。
微笑み掛ける様な拙い声で。
驚いて反射的に振り返る。
さっき閉めたはずのドアが開いていて、其の下方に指がドアを掴むように掛かっていた。
「ひっ・・・」
自分でも驚くような変な声を上げて、尻餅をついた。
徐々にドアが開いていき、其の顔が見えた。
女の子だった。
微笑を浮かべ、時折痙攣していた。
女の子は私を見詰めて動かなくなった。
私も何故か、逃げないで其の女の子を見詰めていた。
不思議と怖いという感情が段々薄れてきて、体が動かなくなった。


どのくらい時間が経っただろうか。
「只今~」
母の声がした。
途端に女の子はドアから手を離して笑いながら中に消えて行った。
「あれ?まだ起きてたの?」
母が能天気な言葉を吐き捨てて、其の場を離れた。
私は其の後、朦朧とする視界とふらつく頭を必死に抑えながら直ぐに眠りに行った。


相変わらず、私は学校で苛められている。
でも一つ変わった事がある。
友達が出来たのだ。
名前も知らない、友達が。



※携帯小説 「匿い屋」 抜粋 一部修正

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